流れ者の健次がこの事件に巻き込まれたのは玄界灘でのんびり夜釣りを楽しんでいるときだった。奇妙なブイを釣り上げ岸に帰ると二人の男が彼を拉致した。連れ込まれた屋敷には水原と名乗る男がいて「他人に口外しない」ことを条件にブイの代金として50万円をポンと出すのだった。しかし出された酒を口にした健次はその場に倒れた。意識を取り戻した時はちがう部屋で側には中年の恰幅のいい男がにこやかに彼を見守っていた。男は広上といい意識不明のまま海上をモーターボートで突っ走る彼を救い出してくれたのだった。翌朝、屋敷へ金を取り戻しに行った健次はそこが新歌舞伎・中村枝雀の別荘で水原などという男は一向に知らぬという留守居の女中...